日本語を勉強してみよう〜タイ編〜 その2
外国語を習得するのはとても難しい。
その学習を助けるために参考書があるわけだ。

その1
では、敬語が頻出する上級書を取り上げた。
しかし、当然ながらタイで売られている日本語の参考書全てがハイレベルなわけではない。
「初級」と書かれた参考書も多数売られていた。
これなら初心者でも・・・とパラパラめくってみたが、全く知らない言語を1から学ぶとなると難しく映る。
(試しに日本で売られている「初級タイ語」みたいな本を読んでみよう。全然初級っぽくなく感じるはずだ)
個人的には、本でイキナリ日本語の勉強を始めるのは危険だと思う。
日本語は「ひらがな・カタカナ・漢字」という三つの文字が存在する、とても複雑な言語だからだ。
学校等で基本を固めてから、副教材として本を利用するのが理想的ではないだろうか。
(日本の英語教育でも、最初は先生が「abc・・・」と教えるしね。それが正しい教育法かは別にして)


また、タイにある全ての参考書が完璧というわけではない。
確かに完璧に外国を理解できている参考書は無いのかもしれない(現に「その1」にも誤字があった)。

だが、「これ読んだら間違った日本語覚えちまんじゃねぇの?」と思ってしまう参考書も僅かながら存在する。
そんな、ジュリアにハートブレイクな参考書を見つけてしまった。
もちろん買ってきたさベイビー。







JAPANESE NEW Style/日本語を新しい
ソムシイ シイタナクル著
165バーツ



さて、どこから突っ込もうかな。






まずはイラスト!
なんだこの初期『美味しんぼ』の栗田さんみたいな女は!!
表紙なんだからもっと気合入れて書けよ!下書きみたいじゃないか!


次にタイトル!
なんだよ日本語を新しいって。既にタイトルで日本語を間違えている
「JAPANESE NEW Style」を無理に訳したからだろう。何故か「スタイル」という文字だけ見づらい。
「日本語の新しいスタイル」にすればよかったはずだ。


次に左下の文!
はやいとよういな・・・最初なんのことだかサッパリだったよ。
よく見たら「Quick and Easy Way」の日本語訳のようだと分かる。
これまた強引な訳。テストなら×されてもおかしくない。
無理に訳す必要があったのだろうか。



最後に値段!
こんなインチキ臭い本が、
その1
で取り上げたCD付ハイレベル参考書と比べて15バーツ(約45円)しか違わないというのが理解できない。
こちらはCDなんてものは付いていない。
高い。ボッタクリもいいところだ。






肝心の内容なのだが、本書は初心者向けになっているようだ・・・多分。
ページ開いて直ぐに「ひらがな表」「カタカナ表」、そして発音の仕方があるから、
これから日本語を学ぶ人向けだと判断した。
それでは日本語の学習を始めましょう。






やあ、ごめんごめん。待った?それじゃあ始めようか



なんて爽やかな参考書なのだろう。
これで乙女のハートをガッチリ鷲掴みですね。
PART1ではきっかけ作りを目的とした日本語の台詞を学習するようです。
こんなナイスガイときっかけを作ることができるといいですね。
さあ、ページをめくりましょう。






“atarashii Style”は一味違うぜ



一番最初の台詞は「また会ったね。」だ。
ん?

すでにきっかけできてんじゃん!!


日本語以前の問題に遭遇するも、
次は「楽しんでる?」と何事も無かったかのように聞いてくる切り替えの早さ。
出来るオトコは違うね。




本書の特徴は、
<日本語 - 英語 - タイ語>
という表記になっているので、英語が堪能な人は更に深い学習をすることができる。
が、英語を理解していないと全く意味が無い。
(英会話の本として使ったほうが有用な気がする)


それではこのページに載っている全ての例文を紹介しよう。
繋げて読むと、ちょっとしたストーリーになっているのが興味深い。
なお、原文を忠実に再現している。
(タイ語は理解不能なので割愛させていただく)



また会ったね。
[Mata attane]
So we meet again.

楽しんでる?
[Tanoshin deru]
Are you having a good time?

楽しそうだね。
[Tanoshi soudane]
You look like you're having a good time.

二人できたの?
[(2) futari de titano]
Did you two come here by yourselves?

ここにでれかいる?
[Kokoni darekairu]
Is someone sitting here?

すわらない。
[Suwaranai]
Do you to sit down?

すわってもういい?
[Suwatte mouii]
May I sit down?

ちょっとそっちへ寄って。
[Chotto socchi e yotte]
Scoot over.

名前なんて言うの?
[Nama e nante iuno]
What's your name?

どこに住んでるの?
[Doko ni sunde runo]
Where do you live?




完全にナンパです。
しかも相手は二人!そして周りを警戒している。
少し強引に隣に座った後、名前と住所を聞きだす。


カオスだ。誤字率は高いし、ローマ字表記も何か変。
英文「だけ」が正しいというのが唯一の救いか。
そんなことは気にもせず積極的にアプローチする姿勢、とてもたくましい。
流石は“atarashii Style”。そんじょそこらのヤワな参考書とはワケが違うぜ。





さて、イラストについて気になっている人もいるかと思う。




ははっ、ボクのことかい?



ここで、爽やかで胸キュンなイラストを一部紹介しちゃうぞ。
これでシャイなあの娘もフォーリンラヴさ。
それじゃいくぜ!遅れずに付いてきなよベイビー!






今日は天気がいいからお散歩よ☆ ルンルン♪





キャ☆ 人にぶつかっちゃった!






「よそ見をしちゃダメじゃないか」
「す、スイマセン・・・(やだ、カッコイイ〜)」







「急にキミのことがスキになった!付き合ってくれ!!」
「こちらこそよろしくオネガイシマス!!」



嗚呼、なんて素晴らしいラヴストーリーなんだろう。
愛という名の青春18きっぷに恋の途中下車は必要ないのさ!
(注:実際にはこれらの台詞はありません)



非常にグッとくるイラストではないだろうか。
もしかしたら著者が片手間に描いたものなのかもしれない。
ソムシイさん、いい仕事してますねぇ。



「間違いだらけだし絵がこんなのだし、古い本なんじゃないのか」
そう思った人もいるだろう。
だがしかし!






常に時代を意識しているぜ



かなりatarashii本なのだ!
すごいぜソムシイ!
これからの日本語会話はこうでなくっちゃ!


















タイ人向け日本語会話参考書、いかがでしたか?
タイ人の日本人観を垣間見ることが出来たのではないでしょうか。
いや、絶対ソムシイは日本を意識してるって。

このように、外国語の参考書はネイティブが見ると大変興味深いものになっています。
みなさんも是非海外へ旅行する機会があれば、旅先でこういった日本語会話の本を探してみると面白いと思います。


ちなみに僕は、これら本を買ったとき(同じ店で買った)、
店員に
To speak Thai?(タイ語を話すためですか?)」
と尋ねられました。
「日本でネタにするためです」だなんて言えるわけがないから(そもそも英語で説明できない)
満面の笑みで頷きました。店員さん、ゴメン。








姉妹品のタイトルまでも間違えているソムシイに幸あれ