損害賠償請求事件/アイドル訴訟第一審判決@


アイドルだって訴訟する。
「ボクの○○チャンは提訴なんかしない!(*1)」というのはオタクの幻想でしかないのだ。

アイドルは国民の注目の的だ。
TVに出ている姿だけでなく、普段の姿も拝みたいというのが(キモい)ファンの心境だろう。
そこが争点となった事件がある。
今回は、東京地方裁判所平成16年7月14日判決の損害賠償請求事件判決を紹介する。

ご存知の方もいるかもしれないが、
本件は、雑誌「ブブカ」に掲載された写真がプライバシーの侵害にあたるとして
16人のアイドル(多!)が原告となり損害賠償を求めた事件である。
以下、判決を引用しながら検証していこう。



通常ならば、冒頭部分に主文(*2)が掲載されるのだが、
原告であるアイドルたちが多数いるので、冒頭で判決における略称と芸名の対応表が付されていた。
原告を紹介するという目的も兼ねて、以下に引用する。

原告らの略称と原告らの芸名(一部は、本名でもある。)との対応関係は、次のとおりである。

一   原告佐藤  佐藤江梨子
二   原告藤原  藤原紀香
三   原告川村  川村亜紀
四   原告理沙  後藤理沙
五   原告平山  平山綾
六   原告新山  新山千春
七   原告堀越  堀越のり
八   原告後藤  後藤真希
九   原告安倍  安倍なつみ
一〇 原告市井  市井紗耶香
一一 原告中澤  中澤裕子
一二 原告飯田  飯田圭織
一三 原告矢口  矢口真理
一四 原告保田  保田圭
一五 原告深田  深田恭子
一六 原告岡部  優香



そうそうたるメンバーである(知らない人もいるが)。
半分をモーニング娘。のメンバーで占めているのが印象的だ。
既に過去となった人も いるのが時代を感じさせる(*3)。
優香って岡部って苗字なの?まぁ、知らなくてもいいことだな。



さて、お待ちかねの主文である。


一 被告らは、連帯して、以下の各原告に対し、次の金員及び各金員に対する平成一四年六月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 
(1)  原告佐藤に対し、三六万円、
(2)  原告後藤に対し、一六五万円、
(3)  原告安倍に対し、六九万円、
(4)  原告市井に対し、四八万円、
(5)  原告中澤に対し、三六万円、
(6)  原告飯田に対し、二四万円、
(7)  原告矢口に対し、二四万円、
(8)  原告保田に対し、三〇万円、
(9)  原告深田に対し、四八万円、
(10) 原告岡部に対し、三六万円



原告後藤が他者よりも100万円多く賠償金を得ている。
この点は当時の人気の高さからして当然の結果と言える。
しかし注目していただきたいのは原告保田の得た賠償金である。
同じモー娘。メンバーの原告飯田・原告矢口よりも多いのだ!

僕は辻と加護の区別がつかないくらいモー娘。には興味がないのだが、
世間の保田圭に対する評価ぐらいは知っている。
本来なら原告保田が最安値であるはず。

マニア垂涎のお宝写真を他のメンバーよりも多めに掲載されたからだろうか?
「保田不要論」が当該雑誌で展開されたことによる精神的苦痛を賠償額に加味したからなのか?
単に裁判官の趣味だからか(*4)?
理由はともかく、いろんな意味で 興味深い。
あと中澤姐さんの健闘っぷりも泣ける。

もう一つ重要な点がある。
気付いた人もいるかもしればいが、賠償額を得ることができたのは16人中10人である。
では、残りの6人はどうなったのだろうか。


二 原告藤原、同川村、同理沙、同平山、同新山及び同堀越の請求並びにその余の原告らのその余の請求をいずれも棄却する。



なんと、棄却(*5)されてしまったのだ!
主文のみでは棄却の理由は分からないが、とりあえずモー娘。は全員合格ということだ。
知名度からして原告藤原はちょっとくらい賠償金貰えてもいいと思うが・・・歳のせいか!?



今回は主文のみを紹介するに止める。
主文のみでも幾多のドラマを感じてくれたことだろう。
次回は裁判官の「プロっぽさ」に焦点を当てていく。

 

 

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*1 かつて、我が国には「アイドルはトイレに行かない」という神話があった。
*2 判決の結論の部分で、判決主文ともいい、裁判の核心をなす。
*3 判決は平成16年だが、事件は平成14年まで遡る。
*4 個人的にはこの説を支持したいが、裁判は公平であるという建前がある以上、通説になり得ないのが現状だ。
*5 請求に理由(根拠)がないとして、裁判所がその請求を退けること。実質的な敗訴。